病気と「神の力が現された日」
1839年の夏、馬蹄形をしたノーブーの湿地帯の排水工事はまだ完了していなかった。
集会、開墾、排水工事、建築、作物の植え付けを進める中で、聖徒たちはマラリアを媒介する蚊の危険性に気つかなかった。
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ミシシッピ川両岸のたくさんの教会員が病に倒れた。
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最後にはジョセフ・スミス自身も病気になったが、数日身動きのできない状態が続いた後で、
起き上がって人々に助けを与えよとのささやきを受けた。
7月22日はノーブーとモントローズにおいて「神の力が現された日」であった。
その日の朝、預言者は主の御霊に満たされて立ち上がり、自分の家の敷地内にいた病人たちに癒しの儀式を施した。
川沿いの地区には、病人がもっといて、預言者は大いなる力をもって忠実な人々に癒しの儀式を施した。
その中の一人、ヘンリー・G・シャーウッドは瀕死の床にあった。ジョセフはシャーウッド兄弟のテントの入り口に来て、彼に起き上がって出てくるように命じた。シャーウッド兄弟はその声に従い、癒された。
ヒーバー・C・キンボール長老をはじめとする人々が、預言者について川を越え、モントローズへ行った。
預言者たちは十二使徒たちのの家を一軒一軒訪れ、祝福が必要な人々に癒しの儀式を施した。
その後、ブリガム・ヤング、ウィルホード・ウッドラフ、オーソン・プラット、ジョン・テーラーが、人々を助けるために働くジョセフの一行に加わった。
モントローズで行われた最も印象深い癒しの業は、エライジャ・フォーダムに対するものであった。
ジョセフ・スミスたちが来たとき、彼は口も利けない有様でベッドの中にいた。
「ジョセフ兄弟はフォーダム兄弟に近寄ると、彼の右手を取った…。
フォーダム兄弟の目はガラス玉のようになって動くこともなく、言葉も出ない状態で、
周りで何が起こっているのかまったく分からない様子であった。
ジョセフは兄弟の手を取って、彼の目をじっと見詰めていた。そして『わたしがだれか分かりますか』と尋ねたが、最初は答えがなかった。しかし、わたしたちは皆神の御霊の力が彼にとどまるのを見ることができた。
彼はもう一度『エライジャ、わたしがだれか分かりますか』と尋ねた。
フォーダム兄弟が低くささやくような声で『はい』と答えた。
ジョセフは兄弟に、『癒されるという信仰はありますか』と尋ねた。
今度は彼は前よりはっきりと答えた。
『もう手遅れだと思います。もう少し早く来ていただいていたら、癒されていたと思います。』
彼は眠りから覚めたような顔をしていた。それは死の眠りであった。
預言者は尋ねた。
『イエスがキリストであられることを信じますか。』
『信じていますジョセフ兄弟』とフォーダム兄弟がそれに答えた。
すると、神の預言者は大きな声で、神の威光をまとっているかのごとく、次のように言った。
『フォーダム兄弟、ナザレ人イエスの御名によって命じる。起きて、病から癒されよ。』
預言者のその声は、人の声ではなく、神の声のようであった。家全体が土台から揺れ動いたかのようであった。
フォーダム兄弟は死からよみがえった人のように、ベッドから起き上がった。
顔には血色が戻り、動きの一つ一つに生気が表れた。」
ジョセフ・スミスたちは次にジョセフ・B・ノーブルを訪れ、彼もまた癒された。
ウィルホード・ウッドラフはこのときのことを「教会の設立以来、癒しの賜物を通して神の力が現された素晴らしい日」と回想している。
この時の状態に比べれば、ファーウェストでの試練の方がまだ小さかったと考えていた。